船を使ってモノや人を運搬する海運は、私たちの生活を支える重要な役割を担っています。
海運によって運ばれるものは、石油や石炭、鉄鉱石といった資源、穀物や塩といった食料、さらに家電や食品が詰まったコンテナ、自動車など多岐にわたり、日本の貿易の約99.6%が海運によって運ばれています(出典:日本の海運 SHIPPING NOW 2021-2022)。そんな海運業界の中で乾汽船はどのような事業を行っているのかをご紹介します。
数十億円、数百億円という巨大な船を多数保有し、世界の海を駆け巡って大量の物資を運ぶ巨大会社。
海運というと、そんなイメージをお持ちではないでしょうか。そんな海運業界のど真ん中をいく大手会社と比べると、私たち乾汽船はかなり規模の小さい領域で事業を営んでいます。
私たちが保有している船は、鉱石や木材などの梱包していない貨物を運ぶバルク船(ばら積み船)。
その中でもハンディサイズと呼ばれる比較的小型の船隊を運用しています。
貨物を運ぶ船は、タンカーや自動車運搬船など特定の貨物に特化した特殊な船を除くと、コンテナ船とバルク船の2種類に分かれます。コンテナ船が主にできあがった「製品」を運ぶのに対し、バルク船は主に「資源」を運ぶのが特徴。そしてここに私たちの使命があると考えています。
「製品」は、工場を建設すれば世界各地で製造することができます。その製品を使う場所で作れば、運ぶ必要は無くなります。一方、この地球上で資源が採れる場所は決まっています。この「資源偏在」があるかぎり、資源を世界各地に運ぶバルク船は必要とされ続けます。
資源の運搬は、世界経済を下支えする。そんな使命感を持って乾汽船は事業を営んでいます。
世界を見渡すと、マースク、コスコといった超巨大海運グループが勢力を伸ばしています。国内でも私たち乾汽船は規模の面で遠く及ばず、生き残るためには知恵を振り絞らなければなりません。
そんな中で私たちが追求しているのが、合理を尊ぶ、全体最適の考え方です。海運業界は歴史の古い業界で、非効率的だったり、現代の事情にそぐわない商慣習がまだまだ残っています。そんなムダ・ムラ・ムリを地道に改善していくことで、強い会社を目指しています。
そんな取り組みのひとつが「ご長寿お達者」。船をできるだけ長く大切に使おうという作戦です。日本の海運業界では、新しい船を建造し、一定期間使ったら売却してまた新型船を建造する、というサイクルを繰り返すのが一般的。これは国策事業として海運と造船を成長させてきた歴史が関係しています。しかしそれだけでは厳しい市場で競争力を高めることはできません。そこで私たちは、船を寿命まで大切に使う事で投資効率の最大化を図っています。
ばら積み船の航海の終わりは揚げ地です。この揚げ地が次に航海の積み地となれば効率は良いのですが、時には空っぽの船で遠くの積み地に向うことがあります。全体最適化の視点では、この空船航海はムダということになります。私たちが開発したのは、このムダを排除するためのマッチングツール「Vessel Information Board(VIB)」です。船主や荷主に無料で開放し、最も近くにいる船が荷物を運ぶ情報環境を整備することで、海運ネットワークを最適化を目指しています。
海運事業における実務は成約の機会から航海の完了まで広範囲にわたります。
そのすべての領域におけるカイゼン(業務標準化や知識・経験の共有を通じた業務習熟の加速等)を目的として、「Maritime Operation System(MOS)」の構想実現を進めています。MOSの考えは「Ship Communication System(SCS)」にも展開され、オフィスと船舶とのコミュニケーションだけでなく、当社船隊における船同士のリアルな情報や知見の交換を通じて、航行の安心安全に繋げていきます。
私たち乾汽船には共有化された価値観(Shared Value)、「いぬたま」があります。
それは「合理を尊ぶ」「凡事徹底」そして「もう一歩」です。
合理とは、道理(物事がそうあるべき、正しい道)に合っていて無理のないこと。
それを尊重しようという考え方。他人の意見に屈するのではなく、がんばって正論を吐こうという態度です。
ただし「尊ぶ」なので、常に合理が最優先ではありません。
ときには非合理であっても義理や人情を優先することもあります。
凡事、つまり普通のことを軽んずることなく大切にしようという価値観です。
普通のことを当たり前にこなすことこそ、すべての仕事の基礎になります。
これは何も考えずに手を動かすこととは違います。
与えられた仕事の本質を深く理解し、手を抜かず基本に忠実にこなすことが求められます。
懸命に進んできて「もうダメだ」と思うときに、もうひと踏ん張りする意志の力。
それが「もう一歩」です。
高い目標や正しい方向性に向かって進み、苦しくなったときのもうひと踏ん張り。
その一歩が意志の力を鍛え、成長につながります。
私たちはこの3つを「乾の魂」、通称いぬたまと呼び、仕事に当たる上での基本姿勢として大切にしています。
従来のやり方に固執せず、柔軟に変化を楽しめる人。自分が正しいと思う道を粘り強く切り開ける人。
新しいやり方に挑戦することに喜びを感じる人。
試験のように正解のある仕事で満点を目指すより、テストの問題自体を作る方がいい、という人。
すぐに結果が出なくても、日々の努力を積み上げて一歩ずつ確かな歩みができる人。
乾汽船での仕事は良くも悪くも自由。
自分のやりたいことを自分で見つけられる人にとっては、やりがいを感じられ、大きく成長できる環境です。